教授挨拶

手術の名手たれ  

2023年度ご挨拶

 杏林大学脳神経外科学教室のホームページをご覧いただきありがとうございます。旧年中の皆様方の当教室へのあたたかいご支援に感謝申し上げますとともに、本年も従前と変わらぬご指導をお願い申し上げます。2023(令和5)年4月新年度を迎えるにあたり、教室を代表してご挨拶申し上げます。

 杏林大学医学部脳神経外科学教室は昭和48年に故竹内一夫初代教授により開設され、以後齋藤勇第2代教授(平成2年)、塩川芳昭第3代教授(平成15年)のもと発展して参りました。令和3年1月に中冨が教授着任し、令和4年より診療科長を、令和54月より教室運営 を担当させて頂いております。コロナ感染症の荒波に揉まれる最中、杏林大学の使命である外傷・脳卒中救急を弛まず実践することが託されながらの体制発足となりました。これまで塩川芳昭教授が育まれた成熟した脳卒中・脳腫瘍チームに加わることができたことは幸運でした。学外から突然赴任して来た私に対し、教室メンバーも当初さぞかし困惑したと想像しますが、より良い医療体制を目指して課題発見・原因分析・対策としての仕組み作り・繰り返し運用を重ねるうちに、少しずつ課題が薄皮が剥がれていくように改善されて、新しい体制に順応していただけ始めたのではないかと思います。

 前任地で軸として徹底しておこなってきた理念があります。それは、“手術は頭で行うもの”であり、“手術力は、検討力x手技力x反省力を掛け合わせた力であり、要素ごとに鍛え養うことができる”という信念です。約60名の若手脳神経外科医と共に働かせていただきましたが、この信念に基づき手術診療を共にするうちに、若手がいつの間にかベテランのような検討をするようになり、彼らの成長に驚かされる経験を毎年のように経験致しました。患者の治療適応、開頭、内視鏡、血管内、放射線のどれを軸とすべきか、アプローチ選択は、手術シナリオとリスクは、について何度も検討した上で、治療に自信を持って臨む、その上で手技を含めて細部まで深く反省する体制を実践してまいりました。杏林大学でもこうした体制を構築し、とにかく皆が自信を持って手術に臨める環境を保ち続けたいと思います。

 現教室は全医局員数66名(学内医師15名、学外関連施設医師51名)で、大学医局としては大きくはございませんが、非常に強力な進化向上のマインドセットを持っている先生ばかりです。手術力の高い若い世代が多く集い、修練しあえる環境と指導体制を杏林大学に確立することが私の使命と考えています。

 1次、2次、3次外傷・脳卒中救急診療の維持と待機的高難度手術診療の両立、2024年医師働き方改革問題(時間外労働時間規制)、ナースプラクティショナー・タスクシフト・シェアの導入、コロナ禍による通常診療業務の制限と感染コントロールの両立、血栓回収療法24/7完全応需と今後の国内comprehensive stroke center構想への対応など、向き合うべき課題が多数待ち構えています。本年度は、脳神経外科開設50周年の節目の年でもあり、加えて杏林大学では2024(令和6)4月に分院開設が予定されており、教室の次の50年を見据えた選択と集中の構想と人材育成が急務と考えております。この趣旨において昨年度より、国内のご縁がかなった基幹施設の先生方との情報交換会と人材交流を開始させて戴いておりますが、本年度はさらにこの体制を強化してまいります。

 本年度も全国の先生方のご指導・ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

 

2023年4月吉日

杏林大学医学部脳神経外科 教室主任

中冨 浩文