研究組織・メンバー

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A02:神経応答-遺伝子発現変換を起点とした記憶痕跡形成過程の情報動態解析

研究代表者
奥野 浩行
鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科・教授
WEBhttps://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~biochem2/

紹介文本文

近年、大脳において学習時にc-fosArcなどの前初期遺伝子発現をともなう活性化神経細胞群が記憶情報を保持しうることは広く認識されています。これらの活性化神経細胞は海馬や前頭皮質、頭頂皮質、扁桃体など複数の大脳領野に並列的に存在し、記憶が固定化された後にはこれらの再活性化が記憶想起を誘導することから、記憶痕跡細胞あるいはエングラム細胞と称されています。私たちは本領域の公募研究前半に参画し、Arcプロモーター領域を用いた新しい記憶痕跡細胞マッピング法による大脳多領域の記憶痕跡細胞解析法の開発を行ってきました。その結果、マウス海馬歯状回では獲得から1ヶ月後の記憶想起時においても前初期遺伝子が発現誘導されることやこの細胞群を活性化すると記憶想起を誘導するということなどの結果を得ることができました。しかしながら、前初期遺伝子発現を誘導する神経活動パターンや前初期発現から記憶痕跡形成にいたる分子プロセス、記憶想起時の前初期発現の意義などについてはいまだほとんど理解が進んでいません。そこで領域期間後半の公募研究においては、神経応答パターンと前初期遺伝子発現を同一個体で連続的に解析する系を構築することによって、記憶形成や想起にともなう神経活動パターンと遺伝子発現の関係を明らかにしたいと考えています。さらには前初期遺伝子の発現介入や前初期遺伝子発現に続く後期遺伝子発現の網羅的転写産物解析を行うことにより、記憶情報記銘動態についての分子実体に関する包括的な知見を得ることを試みます。また、領域内の計画研究および公募研究グループと積極的な連携を行い、新たな研究展開を模索したいと思っています。どうぞよろしくお願いいします。

文献

  1. Yamada M, Suzuki Y, Nagasaki S, Okuno H, Imayoshi I (2018)
    Light control of the Tet-gene expression system in mammalian cells.
    Cell Rep 25: 487-500.
  2. Minatohara K, Akiyoshi M, Okuno H (2016)
    Role of immediate-early genes in synaptic plasticity and neuronal ensembles underlying the memory trace.
    Front Mol Neurosci 8: 78.
  3. Kawashima T, Kitamura K, Suzuki K, Nonaka M, Kamijyo S, Takemoto-Kimura S, Kano M, Okuno H, Ohki K, Bito H (2013)
    Functional labeling of neurons and their projections using the synthetic activity-
    dependent promoter E-SARE.
    Nat Methods 10: 889-895.

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