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Global BioImaging (GBI)の実務者会議Exchange of Experience VIII (EoE VIII)@南アフリカ共和国(2023年10月25日‐27日)に参加して

甲本真也(沖縄科学技術大学院大学 [OIST]・基礎生物学研究所 [NIBB])

Exchange of Experience (EoE)は、Global BioImaging(GBI)が中心となって毎年開催している国際ワークショップである。これは、国際的なイメージングコミュニティが一堂に会し、世界中のオープンアクセスイメージング施設の運営における共通の目標、傾向、課題について議論する重要な場となっている。8回目となる今回のEoEでも、世界中のイメージング施設の管理者、技術スタッフ、科学者、科学政策担当者、資金提供者が一堂に会し、グローバルバイオイメージングネットワークの発展について、新しいアイデア創出のための活発な議論が展開された。毎年、世界中の各ネットワークがホストになり各地で開催されており、昨年はウルグアイのモンテビデオ、今年は南アフリカ共和国のケープタウンとステレンボッシュで開催された。

EoE VIII開催@南アフリカ共和国

南アフリカで開催された経緯としては、African Microscopy Initiative(AMI)の貢献が大きい。AMIがABiSと同様にGlobal Bioimagingのメンバーとして正式に協定を結んだことから、南アフリカ共和国での開催が実現した。AMIはChan Zuckerberg財団の支援を受けて活動しており、バイオイメージングへのアクセスと専門知識・技術をアフリカ大陸全体に普及拡大するための最先端のプラットフォームを展開している。


写真1:African Microscopy Initiative関係者一同によるGBIとの協定書への署名

そのAMIの活動の代表として、南アフリカのケープタウン大学感染症分子医学研究所内にあるAMIイメージング・センターがある。先進的な光学顕微鏡が複数設置されており、これらの装置は、生命科学分野においてさまざまな生物学を研究するための、細胞培養装置や分子生物学実験装置と共に設備が整えられており、トータルサポートが可能なイメージングセンターになっていた。また、専門のイメージングサイエンティストとイメージ解析スペシャリストによって管理運営されており、利用者は研究プロジェクトのコンサルティングから、装置のトレーニング、解析手法の構築などの全面的支援が受けられる。これら全てを、アフリカで研究する科学者に対して最先端の顕微鏡観察を可能にするべく、利用に際し無料オープンアクセスで提供している。決して経済的に恵まれた状況ではないアフリカ大陸全体の科学者を一様にサポートするプラットホームの構築、幅広くバイオイメージングを普及する活動・体制づくりを実現したことに賞賛を送りたい。


写真2:ケープタウン大学に新設されたAMIイメージングセンター
単一カラーの顕微鏡ばかりだが、充実した設備になっていた

EoEVIIIのテーマ

今回のEoE VIIIのテーマは“How to Empower Imaging Scientists through Training “であり、イメージングサイエンティストという職業のさらなる発展に向けて、その第一歩としてトレーニングについての議論が活発に行われた。

イメージングサイエンティストとは:科学研究、医療診断、工学、工業品質管理など、イメージング技術が不可欠な様々な用途において、実験設計、画像データの取得、分析、解釈を行うイメージング科学の分野を専門とする専門家を表す用語で、近年各所で展開されているイメージング基幹施設で管理運営を担う専任管理者。

近年では、様々な高度イメージング技術の必要性が増加すると共にイメージング機器の多様化・先端化と操作技術の高度化など、個々の研究機関において整備・運用することが困難であり、イメージング基幹施設の設置・活用が進められている。日本国内でもABiSプラットフォームが各種の先端・特殊イメージング機器を運用している国内連携機関と共に生命科学研究への先端イメージングの支援を行っている。今後の日本国内のバイオイメージングのさらなる発展に必要不可欠なイメージングサイエンティストの普及と、プロフェッショナルなキャリアパスとして認知されて行ってほしいところである。

ABiSの活動について

EoEのシンポジウムの中で、各国、各ネットワークの活動報告をする機会があるが、今回はABiSを代表して私が活動報告をさせていただいた。これまで私や平岡先生が担当させていただいている光学顕微鏡のトレーニングの実績などを紹介しながら、ABiS全体として、電顕やMRI、画像解析など充実したトレーニングコースを展開していることを中心に話をした。今年度は特に、東南アジアからも多数応募のあった2023年7月のGBI―ABiS共催の画像解析トレーニングコースも開催しており、日本国内外にトレーニングの場を展開している事をアピール出来たと思う。今後の東南アジアでのネットワーク展開を進めるよい布石になったコースだったと感じている。それに加えて、来年度2024年4月2−7日に開催予定の、Okinawa Microscopy Workshop 2024 (OMW2024)の紹介もさせていただいた。これは、HHMI Janelia Research CampusにあるAdvanced Imaging CenterTeng-Leong Chew氏率いるチームと共同でOISTにて開催するが、主な参加者のターゲットは、東南アジア諸国と日本国内の顕微鏡施設関係者である。このワークショップを通じて国内および東南アジアの顕微鏡施設関係者のベースアップもさることながら、顕微鏡施設関係者のネットワークの充実化を目指したい。顕微鏡施設の管理者は自前の施設で解決を強いられることが多く、他の施設ではどのように支援しているかなかなか分かりにくい面も多いため、横の繋がりを充実させることでお互いをサポートし合えるようなプラットフォームを是非展開したい。

WGについて

GBIではワーキンググループ(WG)がいくつかあり、顕微鏡施設関係者向けのトレーニングや、キャリアパスについて、また、顕微鏡施設の存在が研究に与えるインパクトについて、などさまざまなテーマを議論している。また近年のバイオメディカルイメージングに対して、光学顕微鏡、電顕、CTやMRIなどのマルチモダルな階層を超えたイメージング技術の共通プラットフォームでの共有と必要なトレーニングについて議論が盛り上がった。そんな中、私は、今回からスタートした、コアファシリティ施設のセットアップについてのWGの座長を務めさせていただいた。施設の設置・管理・運営に至るための課題点やその解決方法などのノウハウがさまざまな技術の施設化の際に役に立つことがわかり、共有することの有効性・必要性を大いに感じた。今後、日本国内でも展開されて行くであろう、顕微鏡施設の設置管理運営のスムーズなキックオフが出来るようにサポートしていきたい。


写真3:総勢80名を超える現地参加のあったEoEVIII、参加者の熱量が凄かった

Imaging Scientistという職業

今回のEoEでも大きく取り上げられた顕微鏡施設のスペシャリストとして、Imaging Scientistという職業がある。この職のメインとなる業務は一見顕微鏡施設の管理運営のようだが、大きく考えていくと、それだけにとどまらず、顕微鏡を使った研究全体のクオリティ保証に大いに貢献していることがわかった。Imaging Scientistによる顕微鏡を用いた研究解析の部分での質の向上が、延いては研究プロジェクト自体の質の向上にも寄与しており、まるで「研究の守護神」のようだとの発言が出たり、顕微鏡施設関係者のキャリアパスを充実することが、大学・研究所での研究全体のレベルアップに繋がるなどの多くの声に、顕微鏡施設の管理者としてとても心強く感じた。

EoE2024は日本開催!

さて、来年度2024年のEoE開催は日本である。ABiS事務局のある岡崎にて10月最終週(28−31日)に行う予定をしている。基礎生物学研究所の上野先生と共に、オーガナイザーを務めさせていただくことになった。これまでの各国各ネットワーク開催でのEoE参加の経験を踏まえて、ABiSをはじめとした、マルチモダルなバイオイメージングネットワークの現状を知ってもらうよい機会にしたい。また、EoE2024のテーマの一つである、「データマネジメント」に関して、理化学研究所の大浪先生率いるバイオイメージングデータのマネジメントプラットフォームを中心に今後のバイオイメージデータマネジメントについて議論出来る場を提供したい所存である。これと並行して、EoE@岡崎では東南アジアにおいての顕微鏡施設関係者のネットワーク形成の更なる基盤形成を目指すが、これに先立ち2024年4月開催のOMW2024@OISTを足掛かりとしたい。目下EoE@岡崎のプログラム作りに奮闘中である。


写真4:Zeiss副社長のHerbert Schaden氏(左)、本人、上野先生(右)と、岡崎でのEoE開催に向けて話し合うことができた

最後に、生命科学連携推進協議会から今回のEoE VIIIへの参加に対して旅費支援をいただきましたことを深く感謝申し上げます。

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