研究組織・メンバー
A03:統合Salienceモデルに基づく統合失調症の脳領域間ネットワーク病態の解明
研究代表者
宮田 淳・京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座精神医学教室・講師
WEBhttp://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/%7Epsychiat/index.html
研究協力者
岡田知久・京都大学大学院医学研究科脳機能総合研究センター・特任准教授
吉田正俊・生理学研究所システム脳科学研究領域認知行動発達機構研究部門・助教
紹介文本文
統合失調症では外的な刺激や内的な表象に対して過剰なSalience(重要性、ハッと注意を惹きつけられること)を知覚してしまうことにより、妄想や幻聴などの症状が引き起こされると想定されています(異常Salience仮説)。一方、このようなSalienceの知覚に関わる神経機構として、中脳-線条体のドーパミン神経、前部帯状回および島皮質からなるSalience network、視覚処理系といった異なるシステムがありますが、これらが実際にどのように統合失調症の病態に関わっているのかははっきりしていません。
本研究課題では中脳-線条体の動機的salience、前部帯状回-島皮質のsalience network、および視覚的salienceという異なるsalienceシステムが、脳内で統合されて機能しているとする「統合salienceモデル」に基づき、高傾斜磁場・超高磁場MRIによる次世代の機能的・構造的結合性解析を通じて、統合失調症のネットワーク病態を明らかにすることを目的としています。具体的には以下の3つの研究目標からなります。
A)ネットワーク内・ネットワーク間の機能的結合性の評価
各salienceシステムに関わるネットワーク内の機能的結合性を、課題施行時/安静時のfMRI解析で明らかにします。またネットワーク間の動的(dynamic)・因果的(causal)な結合性解析手法により、各salienceシステム間の統合関係を解明します。
B)ネットワーク内の構造的結合性の評価
上記ネットワーク内の構造的結合性を、マルチコンパートメントモデルなどの次世代拡散MRIで明らかにします。
C)次世代コネクトーム解析
HCPパイプラインによる次世代コネクトーム解析(研究計画・方法で詳述)により、各salienceシステムに関わる脳領域間ネットワークの機能的・構造的結合性の全体像を明らかにします。
文献
- Jun Miyata. (2017)
Two network model of aberrant salience in schizophrenia.
Nanosymposium. Society for Neuroscience, Washington DC, USA. - Son S, Miyata J, Mori Y, Isobe M, Urayama S, Aso T, Fukuyama H, Murai T, Takahashi H. (2017)
Lateralization of intrinsic frontoparietal network connectivity and symptoms in schizophrenia. Psychiatry Research Neuroimaging. 260: 23–28. - Kubota M, Miyata J, Sasamoto A, Sugihara G, Yoshida H, Kawada R, Fujimoto S, Tanaka Y, Sawamoto N, Fukuyama H, Takahashi H, Murai T. (2013)
Thalamocortical disconnection in the orbitofrontal region associated with cortical thinning in schizophrenia.
JAMA Psychiatry. 70: 12–21. - Miyata J, Sasamoto A, Koelkebeck K, Hirao K, Ueda K, Kawada R, Fujimoto S, Tanaka Y, Kubota M, Fukuyama H, Sawamoto N, Takahashi H, Murai T. (2012)
Abnormal asymmetry of white matter integrity in schizophrenia revealed by voxelwise diffusion tensor imaging.
Human Brain Mapping. 33: 1741–1749.