研究組織・メンバー
A01:行動モードの相転移を実現する脳情報動態
研究代表者
中野俊詩・名古屋大学 大学院理学研究科・助教
WEBhttp://elegans.bio.nagoya-u.ac.jp/~lab/japanese/
紹介文本文
動物の行動選択は、極めて動的に遷移する。「歩く」、「走る」などの「歩法 (gait)」の切り替えに見られるように、行動様式は安定的な状態から別の安定的な状態へと動的かつ突然に遷移する。このような「相転移」現象は、行動などの巨視的なレベルにとどまらず、単一神経細胞の活動パターンや、神経細胞集団の活動同期パターンなどにも認められる。動的な状態遷移は、生き物が環境に柔軟に応答するしくみであり、そのメカニズムの理解は、経済活動の理解や予測、あるいは新たな学習アルゴリズムの着想など、多様な分野に波及効果をもたらすと期待される。これまでに、理論および実験的手法を用いて、神経ネットワーク状態の相転移を引き起こす神経回路動作原理の解明が試みられているが、神経回路の接続様式に基づいた研究は現在に至るまで実施不可能であり、その動作原理の全貌は未だ不明である。
本研究では、全神経細胞のコネクトームが完全に理解されている唯一のモデル生物である「線虫C. elegans」をもちいて、神経ネットワーク状態の相転移を捉え、その動作原理に迫る。これまでに、線虫は温度勾配上において至適温度を探索する際に、2つの異なる行動モードを切り替えながら、至適温度地点に到達することを見出した。さらに、個々の神経細胞を脱落する系統を網羅的に作成し、これらの行動モードの維持・切り替えに重要な神経細胞の絞り込みを行なっている。本研究では、実験および数理モデル解析を駆使することによって、行動モードの動的な状態遷移を引き起こす神経回路動作原理を明らかにすることを目的とする。
文献
- Yamaguchi S, Honda N, Ikeda M, Tsukada Y, Nakano S, Mori I and Ishii S (2018) Identification of animal behavioral strategies by inverse reinforcement learning.
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