研究組織・メンバー

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A03:認知プロセス依存的に柔軟に経路変化する皮質層・領域間情報動態の研究

研究代表者
竹田真己
高知工科大学総合研究所脳コミュニケーション研究センター・特任教授
WEBhttp://www.souken.kochi-tech.ac.jp/BrainCom/

紹介文本文

「記憶は脳のどこに蓄えられ、どのような形で表象として取り出されるのか」との問いに対し、これまで記憶課題遂行中の電気生理学的研究や神経心理学的研究などにより、下部側頭葉領域および領域間の役割に関する知見が蓄積されてきた。また、記憶機能に関しては、短期記憶、長期記憶、意味記憶、エピソード記憶といった複数の記憶システムが存在することが主に心理学的領域で提唱され、記憶タイプの分類が進められてきた。しかし、複数の記憶タイプが同一の神経回路の動作によって同じように、符号化、保持、想起されるのか、または異なる動作によってなされるかについては全く分かっていない。そこで、本研究では、文脈に応じて記憶想起内容を切り替える課題を新規に開発し、側頭葉に存在する記憶神経回路が、想起すべき内容によって情報伝達の様式を柔軟に切り替えるのかどうかを検証することを目的とする。この目的を実現するための技術的開発として、脳機能イメージング法の高解像度化を目指す。多チャンネルヘッドコイルによるfMRI画像取得のためのパラメータの最適化、および頭部の動きを最小化するための頭部固定装置の新規開発などを行う。これらの技術的開発を行うことで、機能画像の皮質深層、浅層レベルの高分解能化を図る。また、多チャンネル脳波計の電極位置をMRI画像上で高分解能で同定する手法を開発する。これらと並行して、文脈に応じて記憶想起内容を切り替える記憶課題を新規に開発する。記憶課題遂行中の脳活動をfMRIおよび脳波計により計測することで、認知プロセス依存的に柔軟に経路変化する脳内ネットワーク情報伝達の過程を解明することを目指す。

 

図1 文脈依存的な記憶課題

複数の手がかり刺激が提示されたのちに、想起文脈を示す情報(memory context)が提示される。その文脈情報に従って想起する視覚情報を柔軟に変更する。この課題例では、対連合記憶による長期記憶のほか、手がかり刺激として提示されていたか判断する再認記憶の近接効果および親近効果を調べる。

文献

  1. Tamura K, Takeda M, Setsuie R, Tsubota T, Hirabayashi T, Miyamoto K, Miyashita Y. (2017) Conversion of object identity to object-general semantic value in the primate temporal cortex.
    Science. 357(6352): 687-692.
  2. Miyamoto K, Osada T, Setsuie R, Takeda M, Tamura K, Adachi Y, Miyashita Y. (2017)
    Causal neural network of metamemory for retrospection in primates.
    Science. 355(6321): 188-193.
  3. Koyano KW, Takeda M*, Matsui T, Hirabayashi T, Ohashi Y, Miyashita Y*. (2016)
    Laminar Module Cascade from Layer 5 to 6 Implementing Cue-to-Target Conversion for Object Memory Retrieval in the Primate Temporal Cortex.
    Neuron. 92(2): 518-529.
  4. Takeda M, Koyano KW, Hirabayashi T, Adachi Y, Miyashita Y. (2015)
    Top-down regulation of laminar circuit via inter-area signal for successful object memory recall in monkey temporal cortex.
    Neuron. 86(3): 840-52.

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