会期平成30年6月5日(火)13時〜18時(12:00受付開始)
会場一橋講堂 学術総合センター2F(東京都千代田区一ツ橋2-1-2)
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小原雄治(先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム 研究支援代表者):
それでは時間も迫っておりますので、最後のパネルディスカッションに入ります。司会は私、ゲノム支援の担当で小原と申します。よろしくお願いします。
ご登壇は向こう側から、本日ご発表いただいた深川先生、大谷先生、佐藤先生、多喜先生、岩田先生、支援側からは、今井先生、狩野先生、高田先生、黒川先生となっております。
では早速ですが、私たちのところも今回3年目で、中間評価で、その次、さらにはその終わった後のことを考えていかなければいけない時期になりました。
まずは、今日ご登壇いただいた被支援者の先生方が支援を受けられて、これはヨイショをしていただく必要は全くないですけれども、最先端から見たら、本当にこれがなかったらできなかったの?とかなり聞かれるのですが、支援があったからこそ非常に進んだところ、それから、とは言えこれ何とかならないかという課題、その2つに関してありましたら、ご提供いただければと思います。ではこちら、岩田先生からお願いいたします。
岩田 淳(シンポジウム演者:コホート):
東京大学の岩田でございます。私は剖検脳を使うという仕事をしておりますので、そもそも支援をいただかないと何もできないということであります。私が実際に拝見している患者さんだけで、10とか20とか30とか50という例を集めることはまず不可能なので、その点においては非常に感謝をしているということでございます。
問題点はということを言うと、実はないと言えばないんですが、やはり症例を選択する作業というのが、ある意味手作業というか、家内制手工業のようなかたちで進んで行って、それはそれでとてもディスカッションが進んでいいんですけれども、私だけにとってみればいいんですが、もっとほかに利用者が多くなった場合に、もっとシステマティックにできるようなシステムを作っていったほうがいいと思いますし、なおかつブレインバンクというもの自体が非常に貴重なものなので、日本全国でそういったものを汲み上げて、ほかのバンクにはこういったものがあるとか、ここのバンクにはこういったものがある、要するに図書館のようなシステムだと思いますけれど、そういったものが有機的にできていくと、より研究が進むんじゃないかなと私は思います。
小原:広げて、それをワンストップで使えるような形がありうると。ありがとうございます。それでは、一回り伺いたいと思いますので、次に多喜先生お願いします。
多喜正泰(シンポジウム演者:イメージング):
名古屋大学の多喜でございます。私は有機化学者で蛍光プローブを作っています。幸いなことに、名大の研究所というのが、ちょうど東山先生の植物イメージング解析支援の場所だったので、このような機会を簡単にいただくことができて、研究を非常にスムーズに実行することができました。それから、こういった機会を通じて、今の1つの研究支援先だけではなくて、岡田先生、今村先生、根本先生といった、ABiS(先端バイオイメージング支援プラットフォームの略称)の中での横断的な研究支援をいただき、研究を多方面に展開させることができたという点で、非常に助かりました。
今の問題点といいますか、僕らのように生命科学分野からちょっと離れたところにいる、化学をやっている人間から見ますと、このプラットフォームの存在自体は、多分そんなに知れ渡っていないんです。特にわれわれの分野では、蛍光イメージングに携わっている化学者はかなり多いはずなんですが、にもかかわらず、イメージングの支援を受けられるというこの事実がなかなか知れ渡っていません。生命科学研究分野だけではなくて、もっといろいろなところにこういった支援の輪が広がればいいなと思います。
小原:お話を聞いていて、後で議論になりますが、先端的な技術開発ですね。これは、支援というのはいつまでも同じことをやっていてもしょうがないので、技術向上しないといけないんですけれど、先生の場合は支援技術の向上のところから始められて、たまたまトランスフォーマティブ生命分子研究所で一緒にやっているからできたんだと思いますけれど、これを化学の分野にもっと広げてやっていけば、そういう潜在的にやっていただける方がたくさんいるということなのでしょうか。
多喜:小原先生のおっしゃる通りだと思います。
小原:狩野先生、支援側として何かコメントありますか。
狩野方伸(先端バイオイメージング支援プラットフォーム 研究支援代表者):
はい。常に技術革新が必要だということで、特にイメージングの場合には、テーラーメイドというか、被支援者と支援者側が密接に、その用途に応じて、既存の技術を改善して目的に達するわけです。多喜先生の場合には、それが達成して非常にいい例ではないかと思います。そのようにして技術が進んでいけば、支援する側にとっても非常にメリットがあります。今おっしゃられた点、なかなか知られていないということなんですが、われわれはそれは意識していて、いろいろな学会に行ってブースを設けてPRしたりしているんですけれども、われわれの考えの及ぶ会というのはだいたい生命科学の学会でして、化け学のほうまで全然考えが及びませんでしたので、今後もっと手を広げてPRするようにしなきゃいけないと思いました。
小原:佐藤先生はむしろ頼んだ方を支援したほうですけれども、関連して上手く行ったことを話していただけますか。
佐藤良勝(シンポジウム演者:イメージング):
そうですね。多喜先生と一緒にやるようになって、蛍光色素というのは、われわれは5年前まではカタログとかから購入したりするものであったんですけれども、トランスフォーマティブ生命分子研究所で初めて化学者と一緒にやることになって、パブリッシュ前に生物学者もそういった良い色素に出会えて研究を始められることのメリットというのは、研究を非常に加速させることだと思うのでとても良いことだと思います。そして、やはり自分のところで直感的に抱えきれないというか、専門領域の異なる今村先生だったり、岡田先生だったり、そして根本先生のところに持って行ったら、もっと早く世の中に発信できるんじゃないかということで、ABiSを活用して、私たちはABiSの中での拠点間連携を取らせていただきました。
小原:はい、分かりました。それでは、大谷先生よろしくお願いします。
大谷直子(シンポジウム演者:動物):
私も以前、がん研究所から東京理科大学に移りまして、肝臓がんの仕事を続けていたので、やはり臨床サンプルをこのプラットフォームを通じて解析していただけたというのは、とても大きな支援でした。ですので、何か生命科学の研究について、ヒトではどうかということを調べたい場合に、理学系の先生たちもバンクの臨床サンプルを利用できるんじゃないかというふうに思います。
周知についてお話ですが、私は以前、がん研にいたので、支援があることは存じておりましたが、本日お話を聞かせていただいて、かなり先進的な非常に素晴らしい支援があるということを知りました。もし可能でしたら、さらに研究者に周知をしていただければと思いました。
小原:今日まで知らなかった(笑)?
大谷:いえ、ここまですごい先進的な支援だったとは、すみません、本日知りました。もう少し周知を、ブースとかだけでなく、ダイレクトメールとかでもしていただけたら…。
小原:なかなか難しいんですよね、個人情報とか…。
大谷:そうですね。
小原:今おっしゃった、理学系でヒトのサンプルが使いにくいというのは本当にそうだと思いますので、これは宣伝価値がありますよね、そういう広がりを作っていくことも。それでは最後に深川先生お願いします。
深川竜郎(シンポジウム演者:ゲノム):
黒川さんも先ほどおっしゃってましたように、ゲノムってどんどんどんどん進んでいますから、次世代シークエンスで読むだけだったら、実は会社に頼んだほうがいいんじゃないかというのは、もちろんゲノムの支援ではよく言われることだと思うんです。ただ、2つポイントがあって、1つはやっぱり会社に送ったりすると、クオリティーとかは見ないで、ただ読んで、何かよく分からないシークエンスデータが出て来て、どう解釈していいか分かんないみたいなことが、けっこう往々にしてあると聞くんですけれども、そういう意味で言うと、やはりきちっとした研究者が、そのサンプルの質とかもきちんとチェックしながらやってもらえるという意味では安心感があるというのが1つメリットだと思います。
もう1つは先ほど議論になっていたように最新の技術ですね。もちろん論文的にHi-C (Chromatin conformation capture sequencing)とか4C (Chromatin conformation capture with inverse PCR)とかというのがどんどん出ているとは言っても、やはり非常にcomplicatedな技術なんで、ここはよく分かっている人とよくディスカッションしながら、共同研究ベースで進められるというのが大きなメリットだと思うんです。
問題点は、やはりシステムのことだと思うんですけれど、これは科研費だからしょうがないのかもしれないし、こういうものはしょうがないのかもしれませんが、単年度申請で、しかも6月に締め切って、7月、8月から始めるというのは、ちょっとやはり支援を受ける側としては、もどかしさを感じるというのは事実です。その辺は何かどういうのがいいのか分からないですけれど、ちょっと工夫してもらえると非常にありがたいと思います。
小原:今のお話はだいぶ前から宿題になっていると思いますが、複数回公募に向かっています。それから、特に新しい技術開発ですね、機器を入れる、あるいはそれを使える人を育てるということも当然必要ですから、その辺りことに関しては、支援側ではどういうふうに考えておられるのかというのを、今井先生から、問題点も含めてお話しいただけますか。
今井浩三(生命科学連携推進協議会 研究支援代表者):
ただ今のお話、大変ほかのところからも聞こえてくるお話で、やはりいろいろな機器を使えるというのが一つメリットなんですが、これを新しくしていかなければ、世界のレベルに追いつかないというところに来ていますので、次々にそれを新しくするとなると、今の予算ではちょっと足りないんですよね、正直なところ。ですから全部、全て新しくというのは無理ですけれど、せめて非常に競争の激しい分野については、どんどん新しくしていくということが非常に重要だと思いますので、その点、文科省のほうにも少しご配慮いただければありがたいなと思っております。とりあえずそのようなところです。
小原:狩野先生、その辺りに関して、イメージングはいかがですか。
狩野:機器に関してですが、イメージングの場合には非常に高価なものが多いので、基本的にこの予算で機器を更新するということはできません。ですから全て、支援する先生が独自に別の研究費で揃えるとか、あるいは独自に開発するとか、それに頼るしかない状況にあります。ですから、もちろんそういうことに何らかの支援があれば非常にいいと思いますが、それはなかなか難しいかなと。現状はそういうふうな感じです。
それから先ほど単年度申請というご指摘がありましたけれども、イメージングの場合には、多くが支援者と被支援者の話し合いのもとに、継続というか、そういうかたちを取っているものが多いと思います。そうしますと、もちろん採択件数に影響ということにもなりますけれども、今のところそれで、基本的に共同研究ベースが多いと思いますので、継続して仕事に、論文になるまでというかたちでやっています。
小原:はい。では高田先生お願いします。
高田昌彦(先端モデル動物支援プラットフォーム):
今年3年目ということで中間評価なのですけれども、以前は、包括脳支援の頃からずっと継続してまいりまして、かなり生命科学の分野においては相当浸透してきたと思います。ニーズも、あるいはその重要性も非常に認識されておるところでございますし、やはりもう少しこの体制そのものを、もうちょっと安定化と申しますか、やはり5年とか6年ごとのプロジェクトというかたちでは、なかなか安定したものができかねるということもございます。やはりそういった体制そのものも見直す必要もあるんではないか。当然プロジェクトもそうなんですけれど。一方で、重要な問題としまして、若手研究者の支援をするということもございますが、その支援する側の人材、そういうものを整備しておかなければならない。やはり経費の面でも十分ではございませんので、支援者側も結構自分自身の研究費の中から充当している部分がございますし、やはりその成果も、もう少し、あまりにも支援者側が疲弊をしておるような状況では本末転倒ですので、そこら辺はもう少し文科省の方とも話をしまして、支援をしている側も十分なそれに見合った業績になって、それをどんどん今後も継続をして中心になっていくような、そういう人材を育成していくと。そういう視点も今後は非常に重要になってくるんじゃないかというようなところを、まずはお話しさせていただきます。
小原:はい。その点はものすごく大事なことだと思います。では黒川さん、ゲノム、情報科学の立場からお願いします。
黒川 顕(先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム):
まず機器の更新に関しましては、今井先生はじめ皆さんおっしゃっているとおり、どこでも必要になってくると思います。特にシーケンサーに関しましては、今現在ワールドスタンダードとなっているシーケンサーも、もうすでに発売中止になっていますし、そうなると早晩、試薬類も発売中止になってしまうということで、やはり機器の更新というのは必須であろうと思いますので、その点は何とかしていかなければいけないというふうに感じています。
また、われわれのところはシーケンシング支援のみならず、情報解析支援もやっております。稀にというか、しばしばといいますか、よく忘れられがちなんですけれども、やはりそういう機器類が更新されると、往々にして情報量が膨大に増えてまいります。そうすると当然、それに解析をする情報解析機器類の更新も必要になってきます。すなわち大型の計算機であるとか、スパコンでありますとか、そういうところが必要になってくる。さらにスパコンに関しまして申し上げると、基本的にはバイオロジー、この分野で非常に使いやすいようなスパコンにしていただかないと使い物にならないと。使い勝手のよいスパコンがどういうスパコンかというのはいろいろ条件がございますけれども、とにかくそういうことにもご配慮していただかないといけないなというふうに感じております。
人材育成のところですけれども、昨今これまでバイオインフォマティクスの人材に関してだけちょっと申し上げると、バイオインフォマティクスというのは、これまでは基本的には配列解析を中心とした人材でした。ところが昨今、非常に多様になってまいりまして、先ほど来、深川先生がおっしゃっているようなHi-Cでありますとか、そういうものになってくると、少し、ちょっと毛色の違うような知識を持っていないと解析ができないような情報も扱わねばならなくて、さらにAIの登場となってきますと、さらに複雑多様化してまいります。そういったところの人材育成というものも、どうやって伸ばしていくかというのは課題になっているところです。
小原:ありがとうございます。ご意見がかなり出たと思いますが、この支援活動は技術あるいは機器の共用みたいなかたちでよく言われるんですが、物理系の大規模な機器の共有とですね、生物系における機器あるいは技術の共有というのはずいぶん違っているんですね。物理系はかなり大きなものを作ってやらないといけないので、逆にみんな集まるんですけれども、生物系は最終的には例えば病院ごとにないとヒトに還元できないので、各地に分散することが重要であります。だからそういう意味では、どこに作るのかということがあってですね、まとまらない。学術会議の大型計画ってありますけれど、なかなか生物系では一本に集めることができないわけですね。その中で、これは奇跡的に技術を提供するということで、科研費に限られてはおりますけれども、こうやって出来て来たんですが、これをどうやって生命科学全体に役に立てるか、生命科学そのものがそういうかたちでしかできないわけですから、将来展望が必要です。高田先生がおっしゃったような仕組みが必要だと思うのですが、4〜5年前にこれを設計しましたが、黒川さんがおっしゃったようにいろんな分野が物凄いスピードで進んで行って、あの頃に望んでいたことが今は叶えられる、しかしそれが当たり前になって陳腐化していくということになってですね、次の5年を見据えたときに、どういう体制で生命科学を支える、一緒に共同作業をと思っていますが、できるのか。その辺はアイデアを作っていかないといけないんですが、ユーザーというか支援された側から見てご提案あるでしょうか。深川先生、放っておいたら外注でもできるような部分は絶対出てくるんですね。それでは済まないわけで、それを克服する体制には?
深川:体制というか根本的な考え方だと思うのですけれども、それぞれの支援でちょっと違うかもしれないですけど、ゲノムの場合は昔からそう言われていて、単なる会社と何が違うかということだと思うし、やはり支援をする人の評価体制というのを、多分根本的に変えないといけないのだと思います。ですからつまり、こういうのは非常にやはり重要なんですね。簡単に論文の数、これはよく生物系だと、オーサーの論文の数とか、人の共著ばかりに載っているとだめだみたいなことを言う方も時々いらしたりするのですけれども、これは全然違って、やっぱりこういういろんな人、あとあるいは技術開発みたいなことを含めて、まさにどなたかがおっしゃられていましたけれども、支援する側の次の世代をどんどん育てていかないと、多分難しいと思うんですね。だからそれをやはりひとえに評価する体制だと思うんですね。いま日本では特に「評価」ですから、こういう支援する人たちというのが、非常にわれわれから見たら重要なんだということを訴えて、それが、そういうことをうまくやれる人を、非常に高くする体制というのを作るということがやっぱり大切で、そうすると、もちろんお金の問題は、最新の機器はなかなか難しいかもしれないですけれど、最新の技術を、こういうもので支援して作っていく。ということは、一緒に支援する側とされる側でやっていくべきだということは、個人的には強く感じています。
小原:その点、今井先生どうですか。
今井:おっしゃるとおりでして、そこはわれわれもずっと以前から気づいておりまして、今は支援する側とされる側とがinteractionをどこのプラットフォームも取られていて、これが本当に価値のあるものなのかから始まって、レベルの高いものなのか、あるいは若手に資するものなのかというところで選択しております。それから文科省の審査委員会の先生方からも、これは支援する側がむしろ積極的に共同研究というかたちでやっていかないと、そのインセンティブがなくなって支援が成立しなくなる、というご懸念はいただいております。われわれもそれは共有するところですので、今は共同研究をどれだけ日本として展開していくかという観点で、先ほど先生がおっしゃいましたけれども、ファーストオーサーかどうかということよりも、その仕事自体をレベルの高いものに上げていくという方向が最も重要なポイントなのではと考えております。少しずつそのような方向になっているとは思っております。
小原:はい。では大谷先生、一言お願いします。
大谷:私たちはマウスモデルを使っておりますが、そのようなデータについて、やはり数理モデルとか数学的な解析が必要となってくるような状況が多くあるので、その辺り、専門家に依頼したく、私たちではどうしようもないので、そのような窓口があるといいなと思っています。
小原:ただ一方、ゲノムでなんですけれど、データがたくさん出ても、全部丸投げで解析してくれというのがあって、どっちが主体なのか分からなくなってくるようなこともあってですね、先ほどのお話にもありましたどこまで支援するかというようなことも、実は支援の班員の中でもずいぶん大きな問題になっていると思います。しかし、避けられない問題でもありますので、そこは黒川さんは何かありますか。情報解析、ゲノムだったらパイプラインを作ったりして、自分でできるようになるべくしようという努力はしておるんですけれども、いま大谷先生がおっしゃったことは、新しいことの解析ですね、むしろ、将来。そういうことが今後どっと出て来るような気がします。
黒川:はい。でも一方でやはりそういうところには、情報のバイオインフォマティクス的にも新たなデータが転がっているのは間違いないので、そこはオープンマインドでというかですね、できるだけ何かうまく対処できるようなまた新たな技術を作っていくということになるでしょう。
小原:今日も皆さん、「支援をさせていただきます」という言い方をして、まあこれはしょうがないんですけれども、実はそうではなくて、共同研究、論文に載るかどうかはともかくとして、共同研究だと私は思っていますので、お互いに得るものがなかったらこれはやれないので。あとは先ほどの繰り返しになりますけれど、名古屋大学のところ(トランスフォーマティブ生命分子研究所)は、新しい技術が支援の中から出て来たということで、すごくいいことだと思いますが、そういうウィン・ウィンの関係で新しい技術が出てくると一番いいなと思います。何か他にありますでしょうか、名古屋大学について。あと、ケミストリーとバイオロジーが一緒になってやっている、ああいうところはいいと思うんですけれども。
佐藤:おそらくイメージングの性質上、研究者の方と顕微鏡の前で一緒に時間を過ごすしか、もう方法はないんですね。何を見たいのか、どういうことを明らかにしたいのかということで、僕と多喜先生も一緒に顕微鏡の前で画像を映し出しています。そういったことはやはり、非常に研究体制をより濃くします。しまいには、今日お話ししていただいた、長波長の色素というのは、その波長を見た瞬間に、僕自身は植物科学の人間ですのでこれはクロロフィルと分けられると思いつきまして、共同研究を展開しています。そうすると、もうどちらが支援者で、どちらが被支援者か分からない状態になっています(笑)。
小原:ありがとうございます。黒川さんがポジティブサイクルを掲げていましたが、ああいうかたちになっていくと、一番お互いにとっていいんじゃないかなというふうに思いました。多喜先生は、いかがですか。
多喜:身近から支援を受けられたというよりも、本当の意味での共同研究が実現できたことですね。先ほど私、もうちょっと化学分野に周知というか、もっといっぱい支援が広がればいいなということを申し上げました。ただ、身近で佐藤先生の抱えている件数とか状況を見てみると、抱えている件数が非常に多いんです。そうすると先ほど言われたように、支援者側の疲弊というか、そういうものがちょっと出てくるのかなというのが懸念事項でして。
小原:実際そうなんですか?佐藤先生、疲れているということですか?
佐藤:難しい質問ですけれど(笑)。やっぱり基本は、楽しいです。やはり新しいもの(蛍光物質)を持ってこられるので。実は多喜先生を支援するようになってから、うちは植物系の支援の名前を持っているんですが、化学系の方からかなり依頼が、実際にもう増えています。そういった意味で、やはりその分子が活躍する姿を見られるという点においては、やはり楽しいです。ただ、(疲弊するかどうかは)その楽しいと思える割合がこれからどうなっていくかということですね。
小原:それが原点だと思いますね。岩田先生のところはリソースですから、技術というよりも、物が無かったらどうしようもない、それをきちんと集めて、使えるようにもっとほしいということですね。そういう長期的な視点が必要になってくると思います。
岩田:ありがとうございます。もちろんそうでございまして、幅広く使えるようにしていただければというふうに思います。私のような、物をいただく立場からすると、実験計画の時点でもういただくということを決めて、一定数下さいというかたちなので、それほどその時間軸的にここにいただければいいという設定ができる。それでも、論文がリバイスなのでちょっとまた下さい、なんていう対応をいただくこともあるんですが。ただ、技術提供系のご支援だと、こういうことを思いついて、やっていただきたいと思ったときが、例えば今日だったりすると、先進ゲノムにはもう申請を出せないということになって。そういった時間軸的には、やっぱり短さというものがある程度あるといいなというふうには思っております。
小原:これも先進ゲノムの場合は消耗品がものすごくかかるので、どこかで決めないと予算的にはもたないということでありますが、自己負担でやっていただけるとものすごく広がるんですね。それはまあ随時相談ということもあるかなと思っています。
今井:今の岩田先生、最初にもおっしゃっていたんですが、今回は脳の影響ということでそれがダイレクトによい結果を生んだと思うのですが、例えば脳については、村山先生そこにおられますが、このバンクを維持するだけでも実は大変な苦労で、日本全国集めて歩かれているという現状でありまして。本当にチームで系統的にできればいいんですが、結構微妙な患者さんの問題がありますので、なかなかそうもいかないという点があります。
それからコホートとしてもう1つ申し上げたいのは、普通の健常人のサンプルが10万検体あるわけです。これはもう大変な財産で、わが国が誇る10万検体、血清であれ、DNAであれ保存されていますので、これはかなりリクエストに応じて、若井先生の方から出すことができるというふうになっております。
それともう1つちょっと宣伝ですが、血液のバンクも医科研にあるんですよね。そちらのほうも非常に活用されていますので、そういう生体試料というものが、そのほかにがんのパネルもございますし。そういう生体試料というものを、われわれとしてももうちょっと皆さまに知っていただいてと思っているんですが、なかなか広報する場所が簡単ではなくて、いろんな学会等で話しているというのが現実的なところで。あとは、個々の科研費を取っている方のアドレスというのが入手できないものですから、分かっている範囲でやるというのが現状なんですね。その辺も、今後もう少しいい方法があれば大変うれしいなと思っているんですが。あの、どうでしょうか村山先生、最後のところ、脳のことだけちょっとコメントしていただけると。
村山(コホート・生体試料支援プラットフォーム):
広報の手段として、米国神経科学会ではいろんなバンクがブースを出しています。本邦でも日本神経科学学会等関連学会でブースを出して宣伝するというのは良いと思います。
また、日本神経病理学会は、ブレインバンク委員会を30年前に作っており、コンセンサスとしてリソースを作り神経科学に貢献することが重要な課題となっています。私が理事長になってから病理学会にも申し入れて、協力いただける点を協議することになっています。一方臨床の方からも、患者を最初から最後まで診て剖検を得ることで最後の貢献をし、直せなかった病気の解明に死後脳をリソースとして蓄積する気概をもつ神経内科医を育てることを公約に、神経学会理事に選任されました。臨床神経学をベースにリソースを構築することで、臨床神経学の裾野を広げていく姿勢は米英にはあります。それを日本にも作っていく必要があるし、可能であると思っています。
小原:ということで、次の生命科学を発展させるためにはこういう技術が必要ですし、これを共有することも必要であります。なんとか、先ほど議論がありましたけれども、上手い制度を作ってですね、全体に継続発展させたいと思いますので、これは文科省の方もおられますけれども、当然お金もかかることですし、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
今井:本日は大変遅くまでありがとうございます。今後ですね、長い支援活動になろうかと思いますが、ぜひ今日いらした先生方のご意見を伺いながら私共も改良して、どんどん新しくしていきたいと考えておりますので、その点、是非よろしくお願いしたいと思います。
小原:ここに居られる方はこの4プラットフォームを知らないという方はおられないと思いますが、ぜひですね、こういうものがあるんだと、ぜひ相談をしていただければ、色々役に立つこともあるし、一緒に生命科学を盛り立てましょう、ということをまわりにも伝えていただければと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
今日は長丁場でしたが、これにて説明会・成果シンポジウムを終わらせていただきます。どうもありがとうございました。